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【院長の雑記帳4】 体を動かすという事

長生きの時代になってきました。平均寿命は男性が81歳。女性は87歳。しかし、80歳近くなった多くの人は、「寝たきりで長生きしたくない、ピンピンコロリがいい」と言い出します。また、私が医者になって、理解できるようになった言葉に、「親に先立つ不孝」ということばです。いくつになっても、子供に先立たれた親のショックは大きいものです。何年もそのショックから立ち直れない人もいます。しかし、90歳を超える人が珍しくなくなった今、その子供たちも、定年退職したからと言って、気軽に倒れられなくなりました。

ではどうやって健康寿命を延ばすか。私は以下の3点だと思います。
1)病気の予防。
① 癌の6割は早期発見が可能です。早期発見なら、概ね助かります。
② 動脈硬化を防ぐ。(脳卒中 心筋梗塞も、もとは動脈硬化です。)
  つまり、高血圧、高脂血症、糖尿病を避けられるか、コントロールできるかだと思います。
2)体を使う。特に、筋肉を使う。
3)意欲を持って生活する。
病気の予防については、いろいろなところに書かれていますので、今回は 2)の筋肉を使う話を私の知識の範囲でですが、させていただきます。

1)筋肉は第2の心臓である。
静脈には弁があり、血液の逆流を防いでいます。そして、その周囲にある筋肉が、近くの静脈を押すたびに、血液は引力に逆らって、血液を心臓に押し戻してゆきます。つまり、心臓と同じ働きをしているのです。車椅子に座っている人に、足のむくみが多いのをよく経験しますが、このためです。

2)骨を強くするのは、筋肉である。
骨を強くするのに、いろいろな健康食品の相談を受けますが、一番大切なのは体を使うことです。宇宙飛行士が、宇宙船内で運動をしているのをニュースなどで見ることがあると思いますが、あれは趣味でやっているのではありません。ああしないと、骨や筋肉が弱ってしまうのです。重力のない世界では、筋力があまり要りません。骨にも力がかかりません。力がかからないと、骨は作られず、衰え行き、地球に戻った時生活していけなくなります。歩くことで、力をかけることで骨は丈夫になるのです。ベッド上生活になった人が、骨が弱くなるのはこのためです。

3)脳への刺激になる。
筋肉から脳への神経の伝達速度は、0.1秒以下です。筋肉の動きを脳に伝え、脳が指令を出し、その指令に基づき、筋肉が動き、どの筋肉がどの程度収縮しているかの情報を脳に伝える。これをもとに、脳は新たな情報を出す。脳とたくさんの筋肉との間で1秒間に何十回も情報の伝達を繰り返しているのです。刺激された脳細胞は働きを維持し続けます。

4)筋肉の75%は水分であり、体の水分調節にも重要な役割を果たします。

5)寒い時には、震える(筋肉を収縮する)事で、体温を上げます。

6)ブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵し、血糖の調節にも関わります。

7)血管の拡張を通し、血圧のコントロールにも関わります。

8)善玉コレステロール(動脈硬化を防ぐ)も増加します。

9)免疫にも関わります。

人類は動物の時代から、体を動かすことで生きてきました。私のお世話になった大学病院の病院長は、高脂血症の権威でしたが、駅から徒歩20分の道のりを、往復とも歩かれていました。まずは、歩くことから始めてみてはどうでしょう。でも熱中症には気を付けて。